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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)440号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人の上告理由第一点について。

自創法三〇条は、未墾地買収の関係においては、農地委員会を政府の機関として、買収計画等の具体的権限行使に当らせる趣旨のもとに立法されたものであつて、所論のように政府の権限を農地委員会に委譲したものではない。所論は右法条の趣旨を誤解したものであるか又は独自の見解を前提とするものであつて、採用のかぎりでない。(昭和三二年(オ)第四八一号同三五年六月一四日第三小法廷判決、集一四巻八号一三四二頁参照)

同第二点について。

原判決認定の事実関係の下では村農地委員会が本件土地をもつて開墾適地と判断したことは、未墾地買収につき村農地委員会に任された裁量権の範囲を越えるものとは解されず、この点に関する原審の判断は正当であつて、原判決に所論のような違法があるということはできない。

同第三点について。

所論(一)の(い)(ろ)の事由は原審において主張されていないものであり、(二)ないし(四)は買収計画の取消の違法を主張するものであるが、村農地委員会が買収計画を取り消すについては県農地委員会の承認を要するものではなく、初めの買収計画の取消が適法であり、従つて同一土地に対する二重の買収計画でないことは原審判断のとおりであつて、所論は独自の見解を前提として原判決を非難するものであるか、原審の事実認定を攻撃するものである。なお所論(四)の末尾の仮定抗弁として主張するような事由は、そもそも取消事由となるものではない。また(五)所論の如く未墾地買収において、公簿上の面積と実測面積との間に所論の如き相違があつたとしても、買収目的地の特定性が動かない限り実測に従つて面積を定めなかつたこと若しくはこの面積の表示を怠つたことは買収計画を違法ならしめるものではない。所論(六)の事項は買収計画の公告における記載事項でないことは法文上明らかであり、また、公告は買収計画の樹立を関係人に知らせるとともに、関係書類の縦覧を促すためになされたものであるから、縦覧期間の満了の時までなされておれば足りると解すべきである。(七)(八)の異議の決定、訴願の裁決が委員会の審議又は決議に基くものでないとの主張は原審の事実認定を攻撃するものであり、また、審議又は決議に基く旨を文書に形式的に表現することは必要でない。また、異議却下の決定、訴願棄却の裁決に対する出訴期間に関する原審の判断は正当である。所論(九)の如く買収令書に記載された買収の時期までに買収令書が交付されなかつたからといつて、買収令書の交付による買収処分が当然無効となるということはできない。この点に関する原審の判断は正当である。論旨はいずれも採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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